今回は人材管理を目的としたクラウドサービスについて考えてみましょう。まず人材管理とは何かを定義しておきましょう。会社の従業員の勤怠や給与を計算することも人材管理の一つですが、福利厚生やストレスチェック、社員教育、そのような人事制度そのものを指すこともあります。ここでは人事制度を構成する四つの枠組みにそって、まずはどのような機能が人材管理に存在するのか、整理しながらクラウドサービスの導入ポイントを見てみましょう。
1.採用:選考プロセスと情報共有が重要
2.配置:仕事と人の自動マッチングがあると便利
3.報酬:様々なシステムと連携が出来ること
4.評価:難しい評価を簡単に
採用:採用プロセスと情報共有が便利
採用は新卒、中途などの社員から、アルバイトや派遣など非正規社員まで登用する際に必要な機能です。例えば以下のようなプロセスがあります。
・採用戦略/採用計画
・募集/選考/雇用契約
・入社前手続き
新卒採用などのようにまとめて社員を採用するには一般から広く募ることになると思いますが、やはり扱う人の数は無数になるでしょう。その結果どうしてもシステムに頼らざるを得なくなります。人材系のクラウドサービスは広告などを通じた募集から応募、コミュニケーションなどのサービスからなる巨大なメディアでもあり、例えばエンジニア募集ならWantedly、コンサルならリクルートなど、どんな人が登録しているのかがそのメディアによって異なってきます。この部分をクラウドサービスで補うメリットは、誰がいつ応募してどのプロセスに進んでいて、どんなやり取りをしているのか、それが採用チームで共有出来ることで採用業務が効率的になることです。
また個人情報や契約情報を扱うために適切なセキュリティ管理が行われている必要もあります。この辺りも、採用プロセスが進むにつれてシステムから要求できたり、応募者から必要な書類を取得管理してくれると管理が効率化出来ると思います。
採用管理システム「ジョブカン」では、このような採用に関するプロセスを一元管理することが出来、組織で共有することが出来ます。採用イベントなどの効果分析も出来るため、プロセスの改善にも活かすことが出来ます。
他にも採用においては様々なサービスがあります。例えば採用動画を作成して事前に配信できるものや、オンラインで面接が出来るものなど、採用方法の広がりに応じて、様々なサービスが利用できると思います。
配置:仕事と人の自動マッチングがあると便利
毎日同じ職場で仕事するオフィス勤務の社員であればあまり配置の苦労はないかと思いますが、例えば店舗スタッフやイベントに社員を派遣することが業となっている場合、いつどんな需要が必要でその時間空いている人は誰で、ということを無数に調整していかなければなりまません。単に空いていれば良いかというと、スキルが合わなかったり経験がなかったりして適任ではなかったりすると、また調整をやり直し。。そのような事態を回避するには、現場で行われる仕事を管理し、人ごとの稼働やスキルを管理して条件でマッチング出来るのが最も良いでしょう。稼働時間をうまく調整してくれるサービスとしては、リクルートの「Airシフト」があります。主にアルバイト向けにシフト表を集め、転記して、調整するといったことが半自動で出来るため、マネージャーの調整業務が効率化出来ます。
報酬:会計や経費精算と一体型が良い
人材マネジメントの中で報酬というと従業員に支払う給与だけでなく、交通費などの経費精算などもあります。そしてこれらは従業員の所得税や社会保険などを会社が源泉徴収する社会システムとなっている事から、会社が責任を持って年末調整や天引きをする義務があります。
また給与支払い日になれば従業員の銀行口座に振込みされることも当たり前ですが、特に社員が多いとまとめて銀行にデータとして依頼するといった、給与振込サービスを利用する会社もあると思います。更にはこれらを企業会計として正確に認識し、期末残高の計算や資金繰りの前提になっていなければなりません。つまり報酬関係の業務は、単にお金が計算できれば良いという話ではなく、様々な活動と如何に連携出来るかが業務効率性に影響してきます。具体的には報酬関連業務には以下のような要件があると言えます。
必要な機能 :給与計算、経費精算、税金・社会保険等計算
管理するデータ:従業員の口座、勤務実績、給与計算区分(報酬体系)、
税金・社会保険体系、公共交通費
関連システム :会計、銀行システム(インターネットバンキングや
キャッシュマネジメントシステムなど)
会計クラウドのパイオニアである会計freeeは、会計管理が主なサービス領域でしたが、給与計算や経費精算、勤怠管理など、給与だけでなく上記で上げた機能が一通り揃っています。またフィンテックとしていち早く銀行システムとオンライン接続し、給与振り込みに必要なデータ連携や振込み依頼などがほぼ自動で行えるようになっています。さらにはその結果をfreee会計に取り込むことで、一気通貫したプロセスの効率化が行えます。源泉徴収、年末調整、小規模事業者向けでもあるため、これから事業を始める方には特に有効なサービスと言えます。
評価:難しい評価を簡単に
人事制度の中で評価は最も難しい部分です。前述の業務と連携して、特に報酬制度と評価はうまく両立させることが人材育成の重要な意味を占めていますが、だからと言って社員全員を同じ評価にすると頑張っている社員のモチベーションが下がってしまいます。本来は評価されない社員も現状に満足して成長や仕事のやり方を改善するということもなくなっていくでしょう。企業が成長するには、プロダクトではなくむしろそれを支える人材こそ成長させていなかければなりません。そのために評価システムには、具体性、測定可能性、実現可能性、時限性といった要件が存在します。
具体性、及び測定可能性とは目標が誰から見てもわかりやすく、結果が数値などで測れる状態であるということで、例えば営業であればその期の売上や利益などの業績がどうなっている状態なのか、製品開発であれば新商品をいくつ開発するのかなど、達成基準が定義できる状態になっていることが不可欠です。これがなければ社員からみてわからず、結果があいまいなものになってしまいます。
実現可能性については、評価の基準が一人ひとりの社員にとって適度な頑張りによって達成できるのかということです。目標が低いと、当然誰でも達成できることになります。高すぎれば、誰も達成できなかったということで、評価できないばかりか組織の目標自体も達成困難なものになってしまうでしょう。低すぎず高すぎず、各社員のレベルに応じて現状をストレッチすることで達成できる目標が良いとされています。
時限性については、どの期間で達成すべきかということです。半年なのか1年なのか、はたまた5年なのか、その期間と目標はセットで定義する必要があります。会社の中期計画においては数年間をスコープとし、一定期間ごとにチェックポイントを設けそれぞれに目標を設定していけば経営と人材育成の両方がうまくコントロールできるようになるでしょう。通常行うのはやはり会計期間ごとに評価のサイクルを回すということですが、必ずしも企業の活動サイクルは会計期間と一体ではありませんので、目標ごとに期間の考え方を適用すると良いと思います。
人材評価の分野ではシェアNoのあしたのチームは、上記を実現するために評価シートを用いて目標と達成の管理を行っています。MBOというマネジメントシステムに対応し、組織目標を個々の社員に割り当てたかを確認するモニタリング機能、一覧上での可視化、コンピテンシーという企業の重視する社員の持つべき行動特性に基づいたスコアリングなど、全てクラウド上で行うことが可能です。尤も評価そのものは上司の考えている基準と倫理などに照らして行うことに変わりはありませんが、そのマネジメントの仕組みが全社で逸脱していないか等は、システムで出来るだけ可視化するなどすることで、かなり補ってくれています。
最後に
如何でしたでしょうか。人事制度は企業のシステムの中で社員の動機づけ、育成、企業の成長などを、いくつかの要素を組み合わせながら有機的に機能させることで機能する重要な制度です。このバランスがうまく取れているかどうかによって、会社の未来が決まってくると言っても過言ではないでしょう。重要なのはクラウドサービスを選んだら、コロコロと変えずに確りと定着させることであり、上手くいかないからといってすぐにクラウドサービスのせいにしないことです。