◆深刻な人口減少に揺れる商店街消滅危機
ふらっと生花店
日本の高齢化は様々な業界で問題を生じさせている。特に地方の商店街などは過疎化が追い打ちをかけ消滅可能都市と言われる場所が点在しており、人口減少のなかで事業継続性を前提とした都市基盤の継続が地方自治体の大きな課題となっている。
ふらっと生花店はそのような東北の地方都市の商店街にある花屋。40年前から続き、冠婚葬祭や記念日などで地元の人々の生活を潤わせ、飾ってきた。花は生鮮品であり、鮮度が重要である。毎日品定めをして常に新鮮な花を提供することが、人々の門出を彩るうえで大切なことである。オーナーの田代百合さんは現在70歳。毎日商品となる花の状態を観察し、それぞれの花にあった売り方をしてきた。春のマリーゴールド、夏のひまわり、秋のコスモス、冬はシクラメン。入学祝い、結婚記念日、イベントに合わせた相談から、花に関する来客者の質問にも的確に応えてきた。百合さんの頭の中には店頭に並ぶ100種類の花々の特徴だけでなく、日本、海外で咲くあらゆる花の情報が詰まっていた。40年間積み重ねてきた1本1本の花との対話、顧客の興味などによって豊富な情報量を蓄積してきたのである。百合さんはいう。
特別な時に花を送られた人は必ず笑顔になり、その花を大切にすることでしょう。でも決して特別なものではありません。花をもらうだけで嬉しい気持ちになれるとしたら、世界中の毎日を笑顔で満たせると思っています
進まない事業継承
百合さんは最近高齢化のため足腰も弱り、毎日店頭に立つことも辛くなってきた。この商店街にある花屋はふらっと生花店しかないため、百合さんとしてはなんとか後継者を見つけて引き継ぎたいと考えていた。百合さんには子どもはおらず、これまで何人かアルバイトを雇ってきたが、パート主婦などで一時的に手伝ってくれたり、学生で就職までの間に手伝ってくれる人はいた。しかしながら長期で、そしてお店の跡を継いでくれそうな人はなかなかいなかった。
今もアルバイトで働いてくれている立花陽菜という女子高生がいる。彼女もまた花の美しさに癒されることを楽しみに働いていた。花屋という仕事は彼女にとって憧れであったが、商売をしていくうえでの経験は全くない。バイトは花の水やりや店内清掃、商品の補充などで接客は任されてはいない。陽菜自身も、花の相手であれば丁寧に仕事は出来たが接客については色々な知識が必要になることから自信がなく、積極的に関わってはいなかった。実際百合さんは以前少しだけ店番を頼んだことがある。
お客さんが何か買いたいって言ったら、価格表はここにあるから、購入本数から金額計算してね。では店番宜しくね。
はいわかりました。やれるだけやってみます。
すみません、孫の誕生日にお花をプレゼントしようと思うのだけど、ピンク系で長持ちするものはあるかしら?
いらっしゃいませ。あ、えっとそうですね。お誕生日でしたらバラなんかが人気のようですけれど。
バラはどのくらい持つの?
そうですねえ。1週間くらいは持つと思うのですが
それくらいなのねえ。長持ちさせるにはどうしたら良いのかしから?
えーっと、、 水に入れておけば長く持つと思うのですが。。
そんなことは分かってるわよ。もっと長持ちさせるのはどうすればいいかって聞いてるんじゃない
すみません。それ以上はわからないんです。。
そこへ百合さんが戻ってきた。
あら草壁さんいらっしゃい。お孫さんにバラをプレゼントするのね。水はいつも綺麗にして、だんだん短く切って行けば長持ちするからね。
ありがとう。さすが百合さんね。何でも知ってて安心だわ
ふらっと生花店は百合さんの知識で成り立っている。百合さんの知識を、何とか次の世代に承継して行かなければならない。
人工知能は知識を丸暗記する
事業承継の問題は引き継ごうとする側からすると深刻です。オーナー経営者にとって、自分が育ててきた事業ですから当然何でも知っている訳ですが、あまりに事業や経営者というポジションが長かったため、後継者に対してノウハウがしっかり引き継がれない、ということも生じています。それではこのようなケースに人工知能がどのように活かされるのか、見ていきましょう。
・様々な形で知識を蓄積できる
人工知能には様々なデータを記憶されることができます。文字だけでなく画像、音声、動画などマルチメディアを扱えますので、記憶させたいものがどのような形かを問わずに記憶させることが出来るわけです。まずは記憶させることが始まりにはなりますが、この事で人工知能の活用範囲が幅広いわけです。
・パターンの中から最適解を提案してくれる
ある程度の知識が集まったら(教師データと言います)、実際に人工知能に問題を出してみると、確からしいものを順番に教えてくれます。これはある程度の教師データが集まったところでその情報がなんなかのパターンで整理され、出された問題に対し同じパターンが当てはまるものを探し出し、尤も確からしいものを見つける、という処理を行っているためです。そのため結果は確率という形で示してくれます。
・どんなに些細なことも覚えてくれる
何かを記憶させておけば、コンピュータはそれを決して忘れることがありません。どのような小さな知識でも将来役にたつ可能性があると言えます。
なかなか分かりにくいかもしれませんが、ふらっと生花店の場合、人工知能に百合さんの知識を花の画像と共に記憶させておいて、陽菜さんが来客者から質問を受けた際に画像認識させることで、バラの育て方や長持ちさせる方法などの知識にアクセスできるようになるでしょう。
いかがでしょうか。フラット株式会社では、Google Vision APIやWatsonといったクラウドベースの人工知能を活用して、事業承継にもお役に立てるシステムを構築することが可能です 。